連射測定器付時計 シュウオッチ(2008年復刻版)のこと

ABボタン付近

ハチスケの黄黒カラーが鮮烈

ゲーム&ウオッチの復刻版で思い出した復刻版つながりということで、今回は80年代に一世を風靡したポータブルゲーム機(?)シュウオッチの思い出、そして「連射」というゲームについて書いてみたいと思います。


たたけ! たたけ! たたけ!


シュウオッチ(正式名称はシューティングウオッチ)はファミコン全盛期の1987年にハドソンから発売された連射測定器付時計。ゲームボーイミクロから液晶ディスプレイと十字ボタンを取り去ったようなミニマルな風貌は、知らない人には何のための機械なのかすらわからないという大変スパルタンな代物でした。

当時は16連射(もしくは「ゲームは1日1時間」)でおなじみの高橋名人こと高橋利幸さんがゲームキッズたちのヒーローだった時代。子供たちの中ではグラウンドを駆け抜ける走力と同じくらい連射力というものが輝いた時代でもありました。

このシュウオッチ、時計としての面こそあれど、当然メインの機能は連射測定器。ルールは単純で10秒間にどれだけボタンを押せるか。ただそれだけ。
ただそれだけがどれだけ熱かったかというのをこの2015年にお伝えするのは大変難しいのですが、全国の子供たちと大人たちが夢中になって連射に連射を重ねて約60万個を売り上げたと言えばひとつの目安となるでしょうか。
そんな時代背景の中、私自身は教育方針(?)からシュウオッチを買ってもらえる家庭環境ではなく、ただひたすらに机のすみを叩き続けていたのであります。そして、休み時間にみんなで集まってシュウオッチで遊ぶ時間は本当に楽しいものでした。


2008年、シュウオッチ復刻!


そんな伝説的ポータブルゲーム機、いや連射測定器付時計シュウオッチは紆余曲折を経て2008年に高橋名人の手によってついに復刻を果たします。
正確には発売20周年の2007年に企画されたものが、高橋名人のチェック時にクオリティを満たさなかったという理由で一旦リセット、その後2008年に発売となったということです。このことについては日経トレンディネットの記事「高橋名人が制作の苦労を語る、ハドソン「シュウォッチ」復刻までの軌跡」に書かれていまして、シュウオッチという物(ハード)に対するこだわり、連射というもの(ソフト)に対するこだわりの両面をみることができました。


本体表面

2008年復刻版(以下、写真はすべて復刻版のものです)

本体裏面

裏面。復刻版は電池ふたがつきました


いかにして「連射」は「ゲーム」になったか?


シュウオッチがゲーム機としてはやや異端であるということは、そのハード構成(7セグ液晶+2ボタン)と事実上の単機能(連射測定)からもわかりますが、しかしながらこと「ゲーム」という意味では実に本質をとらえたものであったのではないかと考えています。

本来この連射という行為は、シューティングゲームにおいてプレイを有利に進めるためのテクニックであったはずです。事実、高橋名人の16連射が注目を集めたのはスターフォースをはじめとしたシューティングゲームがあってのことでした。
しかし、当然と言えば当然のことながら、シューティングゲームはただ打っているだけではゲームとして成立しません。スペースインベーダーの時代から自機の操作は移動とショットであることが基本である以上、主に操作の面で優劣があらわれます。
そして、多かれ少なかれ、人はこの優劣によってシューティングゲームそのものに対する評価をしてしまう面があるのは否めないわけです。
シューティングゲームの楽しさの一つは「向かってくる敵を倒す爽快感」ですが、その爽快感だけを抜き取ったのがシュウオッチの「連射」でした。避けることも当てることもなく、ただただボタンを叩くことで誰もが得られる爽快感。それは左手の技術に依存しないシューティングの本質と言えるでしょう(余談ですが、高橋名人は1998年発売のスターソルジャー バニシングアースの説明書にてシューティングゲームの原点について「左手の技術よりも右手の感性」という言葉を残されています)。
そしてこの連射による爽快感は、シュウオッチというハードウェアによって競技性を獲得します。


外箱表面

外箱。Huの字が懐かしい

外箱裏面

ん?STマークがシールで貼ってある?


「イコールコンディション」と「ルール下におけるなんでもあり」による競技性の獲得


個人的に、ゲームにおける重要な要素の一つは「イコールコンディション」であると考えています。ゲームはハード+ソフトによるイコールコンディションがあって、他者との競いというベースを得ます。そして、シュウオッチの場合は単体ハードということでこの部分はクリアしています。
そして「10秒間で押されたボタンの回数を計測」というシュウオッチのルールは誰にも曲げることができない絶対のものです。この絶対的ルールのもと、プレイヤーはあらゆる技術を使って記録を伸ばすゲームとなっていきました。この「誰もが同じ条件で」「誰にでもできる行為で」「同じハードのもと」遊ぶことで、爽快感はそのままに競争心は加速しました。
これこそが、1987年当時をしても簡素であったシュウオッチが支持を得た理由だったのではないでしょうか。


左上の穴の使い道

左上の穴にはペンを通してスタンドに

取扱説明書

取扱説明書。正式名称がカッコイイ!


当時だから完成し得た奇跡的なハード


もちろん、シュウオッチの流行にはそれ以外の側面もあったかと思います。1987年という時代は、ゲーム&ウオッチからファミコンへゲームの主流がほぼ移行完了した時期ですが、1989年のゲームボーイの登場まではゲームを携帯するという文化が一時的に途切れた時代でもありました。この状況下で、いつでもどこでも友達と集まってワイワイと楽しめるというのは大変魅力的でした。
ちょっとした空き時間にみんなで遊ぶシュウオッチというゲームは、あの時代でなければ成立しなかったのかもしれません。

2015年2月、2008年に復刻したシュウオッチを力いっぱい連射しながら、そんな事を思うのでした。
それにしても、127回かぁ。衰えたなぁ……。

シューティングウォッチ
ハドソン (2008-12-18)
売り上げランキング: 8,811

2015年2月23日追記


今なかなか実機でのプレイが難しいとお嘆きのみなさんに、実機以外のシュウオッチについて書いてみました。



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