ディスプレイ、音声不良のゲームギア修理のこと

ゲームギア 本体

圧倒的存在感

2017年のゴールデンウィークももう終わり。あっという間ですね。
ゴールデンウィークにはなんだかんだで普段できないような工作ごとをすることが多いのですが、今年は懐かしいゲーム機「ゲームギア」の修理をしてみました。
ちなみに2014年、2015年はほぼ同じ書き出しで「初代ゲームボーイの外装レストア」「初代プレイステーションのリサイクル時計」の工作をしていました。あれ? 2016年何もやってない?


色いっぱい、だからおもしろい……けど売れるとは限らなかった


「色いっぱい、だからおもしろい」のコピーとイッセー尾形さんが出演するTVCMで白黒ゲーム機を遊ぶ少年(=ゲームボーイ)を痛烈にdisったことでおなじみのゲームギアですが、歴史としてはついにゲームボーイ陣営の牙城を崩すには至らず、国内でのセガ携帯機はここで途絶えています(まぁ海外のNomadやドリームキャストのビジュアルメモリあたりはノーカウントで)。



とは言え、当時はカラーバックライト液晶の携帯ゲーム機として大変夢があり、単3アルカリ乾電池6本で3時間というパンチの効いた稼働時間と相まって「セガらしさ」が詰まったハードとして多くのゲーマーの記憶に残っていることでしょう。

ディスプレイ、音声に問題発生?

さて1990年デビューのゲームギア、現役当時は国内178万台を売り上げたそうですが、2017年現在、中古市場でも潤沢な在庫があるとは言い難いのが現状です。
そんな現在のゲームギアで一番多い症状がディスプレイと音声の問題でしょう。ディスプレイが映らない、コントラストを調整しても非常に見づらいといった症状と、本体スピーカーからの音声が出ない、非常に小さいといった症状がよく見られます。私自身、最初に手にしたゲームギアはジャンク品として売りに出されていたもので、幸い音声は無事だったもののディスプレイが不良で、かなり本体を傾けないとまともに見えない、縦ライン抜けがあるというものでした。
これはこれで(ライン抜けが右側に集まっていたため)本体を傾けつつコラムスやアウトランなど楽しんでおりました。

コンデンサ交換で復活できる!?

そんな状態のゲームギアはやはり手に取る機会も少なくなり、さみしくゲーム倉庫に保管されていたのですが、ある時見かけたMGSさん「ゲームギア本体修理」という情報。
いずれの症状も、基盤上の電解コンデンサの交換で改善したという内容で、これは電気工作が苦手な私でも頑張ってみる価値があるのではないかと……。
結果、前述の縦ライン抜けがあるゲームギア(後期型)は、縦ライン抜けを残しつつも見え方は大幅に改善! おそらくそもそもゲームギアの液晶自体の問題で現在普及しているような性能ではないので、納得のいく表示となりました。
その後、もう1台前期型のものをコンデンサ交換修理するも、こちらはコンデンサからの液漏れで基盤が腐食しており作業は難航。それでも修理ができました。


作業前

作業前

作業後

作業後

いずれも「電源ランプは点灯する」「電源投入時にディスプレイは点灯する」という症状の個体でした。今年のゴールデンウィークは、その後入手した「後期型、ディスプレイ点灯するも傾けないと見えない、本体スピーカーから音が出ない」という個体の修理にチャレンジです。

地道な作業

このコンデンサ交換作業、内容はというとあまり解説のしようがない地道な作業でして、大まかに言うと以下の流れになります。


1. 分解


本体裏面の6本のプラスネジと特殊ネジ(エンジニア社のDTC-27で対応)を外して液晶側・メイン基盤側に分解します。


ゲームギア本体背面全景

カートリッジ挿入口部分に特殊ネジが使われています。

エンジニア社 DTC-27

エンジニア社 DTC-27


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2. 既存コンデンサの取り外し


私の場合は、ラジオペンチでコンデンサをつまんで動かしながら外していきました。本来ははんだ吸い取り線などを使うのがよいのかもしれませんが、この方法でポロリと取れます。


メイン基盤向かって左側

メイン基盤向かって左側に9個

メイン基盤向かって右側

メイン基盤向かって右側に3個

サウンド基盤

サウンド基盤に5個


3. 新しいコンデンサに交換


新しいコンデンサをはんだ付けしていきます。コンデンサの容量・耐圧とプラス・マイナスに気をつけて取り付けていきます。
なお、液漏れで基盤が腐食していると結構な苦戦を強いられます。荒っぽいですが、ルータでほんの少しだけ基盤を削って配線が見えるように加工するなどして対応しました。
交換するコンデンサの内容は次項参考情報にまとめました。

4. 工程2〜3の繰り返し

メイン基盤およびサウンド基盤のコンデンサをすべて交換します。
どのコンデンサが無事か調べたり、今後の液漏れなどの可能性を考えるとすべてのコンデンサを交換した方が効率的と言えるでしょう。
なお、後期型メイン基盤は12個、サウンド基盤は5個のコンデンサがあるため、ディスプレイ・音声の両方が不良の今回は合計17個のコンデンサを交換しました。


5. 完成!


修理完了後のゲームギア

復活!

すべてのコンデンサ交換ができたら組戻して動作確認です。
もしうまく動作していない場合は、組戻し時にはんだ付けがうまくできていない箇所が剥がれてしまっている可能性があります。再度確認してみましょう。
そんなわけで、今回の起動確認は「がんばれゴルビー!」で。せっかくなのでゲームギアならではのソフトをいろいろ楽しんでみたいと思います。


コンデンサの選定について


ゲームギアの電解コンデンサ交換修理にあたって、基盤に使われているものと同じものが入手できなかったため、基本的には静電容量を合わせて耐圧はより大きいものを使用しています。
なお、コンデンサの選定にあたっては名古屋・大須のパーツショップ ボントン様に相談にのっていただきました。私一人では膨大なパーツの中から適切なものを選び出すことは難しかったと思います。あらためて御礼申し上げます。

コンデンサ交換の参考情報(後期型)



後期型メイン基盤 交換前 交換後
C1 6.3V 33μF 16V 33μF
C4 6.3V 10μF 16V 10μF
C11 6.3V 10μF 16V 10μF
C14 6.3V 10μF 16V 10μF
C42 6.3V 10μF 16V 10μF
C43 6.3V 22μF 25V 22μF
C45 35V 4.7μF 35V 4.7μF
C48 6.3V 100μF 25V 100μF
C49 4V 100μF 25V 100μF
C54 50V 0.47μF 50V 0.47μF
C55 50V 0.47μF 50V 0.47μF
C68 6.3V 100μF 25V 100μF


サウンド基盤 交換前 交換後
C1 6.3V 100μF 25V 100μF
C2 6.3V 100μF 25V 100μF
C3 6.3V 100μF 25V 100μF
C5 4V 47μF 25V 47μF
C7 4V 47μF 25V 47μF

セガ魂よ永遠に

というわけで、無事ゲームギアの修理が完了です。
2017年現在ゲームギアを実機で楽しむと、ハードウェアのスペックからなかなか厳しいプレイ体験となりますが、そこはそれ、当時の状況に思いを馳せつつ「色いっぱい、だからおもしろい」と声高らかに遊びたいと思います。
それではまた。

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〜本エントリーの注意点〜

このエントリーはゲームギアの修理・改造を推奨するものではありません。ゲームギアの分解および内部部品への加工は故障、事故などの原因となる危険を伴う場合があります。作業にあたっては十分な注意の上、作業者自身の責任で行ってください。


2018年9月23日追記


同じような症状のPCエンジンGTもコンデンサを交換して復活しました!



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